ジョージアには一般法人とIT Virtual Zone法人の2種類があります。それぞれの概要を記すと、以下のようになります。
このように一般法人に比べて圧倒的に優遇されており、法人税率0%であることからオフショア法人であるとわかります。
IT Virtual Zone法人という名前からわかる通り、ITに関わるビジネスである必要があります。そのためジョージア国外で収入を得ている人であれば、ジョージア法人としてIT Virtual Zone法人の設立を考えるというわけです。
ジョージア法人 | IT Virtual Zone法人 | |
---|---|---|
会社法 | ||
最低資本金 | GEL 1 | GEL 1 |
居住取締役 | 不要 | 不要 |
ローカル株主 | 不要 | 不要 |
取締役最低人数 | 1名でOK | 1名でOK |
株主最低人数 | 1名でOK | 1名でOK |
法人株主の可否 | 可能 | 可能 |
設立時のオフィスの要否 | 法人設立時にオフィス住所必要。 ただし、Regus等のバーチャルオフィスでも可能。 | 法人設立時にオフィス住所必要。 ただし、Regus等のバーチャルオフィスでも可能。 「IT Virtual Zone」という特定の場所があるわけではないので、ジョージア内のどこのオフィスでもOK。 |
設立の難易度 | 容易。 現地に行かなくても可能。 | 現地に行かなくても可能。 ただし、法人設立後、IT Virtual Zoneの申請が別途必要。 |
銀行口座開設の難易度 | 他の国での口座開設に比べると容易だが、近年、ジョージア国内での経済活動を行わない業種についての口座開設を銀行側が嫌がる傾向があるとの情報もあり。 | 他の国での口座開設に比べると容易だが、近年、ジョージア国内での経済活動を行わない業種についての口座開設を銀行側が嫌がる傾向があるとのことの情報もあり。 |
税金 | ||
法人税 | 15% | 国外からの収益に関しては0%。 国内からの収益は15%。 |
会計監査の要否 | 不要 | 不要 |
配当(及びそれに類似する支払い)に対する課税 | 5%。 法人側が支払い時に源泉徴収して法人が翌月15日までに申請・納付。 | 5%。 法人側が支払い時に源泉徴収して法人が翌月15日までに申請・納付。 |
付加価値税(VAT) | 18%。 毎月翌月の15日までに申請・納付。 | 免除。 |
個人所得税 | 20% | 20% |
申告 | 配当時の法人税・源泉税や付加価値税について毎月必要。 | 配当時の源泉税について毎月必要。 |
雇用 | ||
ローカルスタッフの雇用 | 可能 | 可能 |
外国人の雇用 | 可能 | 可能 |
ソフトウェア開発をしている法人のみ設立が許可されています。SaaSを含むソフトウェア開発関連の会社のみ、Virtual Zoneの資格を得られるというわけです。それ以外の会社については、法人税0%、VAT0%にはなりません。
Virtual Zoneステータスの取得では事務所を借り、ジョージア人を雇用する必要がある
それだけでなく、Virtual Zoneステータスを取得するためには、必ずIT分野の資格をもつ現地スタッフ(ジョージア人)を雇用しなければいけません。つまり、あなたがフリーランスとして一人で仕事をしていたり、ほかの外注スタッフを活用していたりするだけでは不十分です。
Virtual Zoneの資格取得には事務所を借り、現地の人の雇用が必要なため、当然ながら高額な固定費がかかります。また日本人と同じように、ジョージア人は英語が得意ではなく、さらにはGDPの低いマイナーな国に住んでいるエンジニアになります。
そのためインド人やフィリピン人に仕事を依頼するときのようにスムーズにビジネスは進まず、言葉は悪いですが、使い勝手の悪い社員を雇うことを強制されます。
なお、雇用するスタッフは必ずIT関係の人材である必要があり、ほかの分野の従業員(会計士、アシスタントなど)ではVirtual Zoneステータスを得られません。さらに、このときは従業員の給料から所得税を源泉徴収し(20%)、年金基金への強制拠出分として4%を支払う必要があります。
なおジョージア国内に物理的な施設がなく、前述のようにIT関係の現地スタッフを雇っていない場合、Virtual Zoneステータスを得ることはできません。また、ソフトウェア開発が主要でない事業の場合も許可が下りないことを認識しましょう。
法人税は0%だが、配当や個人所得には課税される
なお法人税が0%なので、IT Virtual Zone法人はタックスヘイブンの仕組みの一つになります。ただ、完全無税にできるわけではないことに注意しましょう。
前述の通り、海外源泉の売上(ジョージア国外の売上)については法人税率が0%です。ただ先ほどの表に記した通り、IT Virtual Zone法人であっても配当に対して5%の納税が必要になります。また個人所得税として、20%の税金支払いが必要になります。
個人所得税20%というのは、タックスヘイブンの中ではかなりの高税率に分類されます。
もちろん日本に比べると、配当課税が5%であり、個人所得税20%で済むのは圧倒的に優れています。ただオフショア法人の中でも、IT Virtual Zone法人はものすごく税金が低いわけではなく、オフショア法人の中では税率が高めです。
他のオフショア法人を利用し、ジョージアに住むべき
こうしたデメリットを理解したうえで、ジョージアに住みながら完全無税にすることができます。
まず、ジョージア法人(IT Virtual Zone法人)を作るのではなく、ほかの国でオフショア法人を設立しましょう。世界には腐るほどタックスヘイブンの国が存在し、「法人税率0%、会計監査なしのオフショア法人」を作れるようになっています。
そこでビザなしでジョージアへ住み、それに加えてジョージア以外のオフショア法人を利用しましょう。つまりジョージアへ長期滞在することによって、日本での納税義務を回避します。ただどこにも税金を納めていない状態では脱税になるため、オフショア法人(ジョージア法人ではない)を設立することで納税するのです。
オフショア法人は年間の更新費用を支払う必要があります。法人税率は0%であるものの、年間の更新費用(35~45万円ほど)が実質的な法人税になります。つまりオフショア法人をもてば、きちんと納税していることになります。
・一般的なオフショア法人は完全無税
また一般的なオフショア法人では、ジョージア法人(IT Virtual Zone法人)とは異なり、配当課税がなければ、個人所得税への課税もありません。つまり、本当の意味での完全無税になります。
もちろん、無駄に事務所を構える必要があったり、社員を雇ったりする必要もありません。そのためジョージアへの移住節税をしたい場合、以下のようにしましょう。
- ジョージア移住(ビザなし1年滞在を繰り返す) + オフショア法人(ジョージア法人以外)
この方法により、東ヨーロッパの国に滞在しながら海外移住節税を行えるようになります。
国外源泉所得だとジョージアでは課税ゼロ
なおオフショア法人で稼いだお金については、ジョージア国外の国外源泉所得とみなされます。ジョージア居住者の場合、国外源泉所得については無税です。これについては、四大会計事務所も明記しています。
IT事業への優遇税制
IT関連の事業を行う場合は、IT Virtual Zoneの申請をご検討いただくとよろしいかと思います。上記表のとおり、
海外からの収入に関しての法人税、付加価値税が免税されるというように節税になるだけでなく、
毎月の税務の手間やコストが下がる効果もあるかと思います。
( ジョージア法人では、原則として毎月配当や付加価値税に関する税の申告が必要ですので )
IT Virtual Zoneの認可が認められるのはIT関連の事業、たとえばアプリ開発、ウェブサイト製作、システム開発等ですが、
現地弁護士や会計士と話をしましたところ、実務的には、現状、インターネットに関する事業であれば幅広く認可されているようで、Eコマースでも認可された事例があり、オンラインマーケティングに関するコンサル業でも認められる可能性があるのではないかとのことでした。
ご自身の事業がITに関連しているものであれば、ひとまず現地弁護士に相談されるとよいでしょう。
会計・税務に関するご注意点
一つ注意点としまして、
ジョージアでの法人設立自体は手続きは非常に簡単で、頑張ればご自身でもできそうなものではありますが、
IT Virtual Zone等の優遇措置が適用されるかどうかという点や、
法人設立後に毎月チェックが必要となる配当や付加価値税の申告・納付のことなどをも考慮しますと
初めから専門家に依頼して法人設立、毎月の会計や税務を依頼される方が良いかと思います。
とくに、
インターネット上では「ジョージア法人は配当するまでは非課税」とシンプルに記載されていることが多いですが、
実際は、配当だけでなく、「事業に関係のない支払いや支出」や「役員への貸付」などのような場合でも法人税が発生する場合があり、知らず知らずのうちに、本来払わないといけない法人税を払っていなかった
というようなこともありえます。
(ジョージアは1年に一回まとめて決算をして法人税を支払えばOKというものではなく、
配当等を支払った月の翌月15日までに支払いが必要ですので。)
登記国だけでなく、他の国の税制にも注意!
ジョージアのIT Virtual Zone制度やラブアン法人のような低い税率の法人を利用して国際的にビジネスや投資を行う場合、
その法人登記国だけでなく、サービスや商品を提供する先の国、投資先の国、役員や株主が居住している国の税制次第や御社ビジネスの形態によっては、
それらの国々においても課税(所得税や消費税等)の対象となる可能性があります。
事前に、関係する各国の税の専門家ともご相談いただき、それらの国々での課税についても十分にご理解されておくことが重要です。
また、日本に居住しながら海外の低税率の国の法人を利用して節税を試みるというのは、
現在の日本の税制(タックスヘイブン対策税制等)や現在の世界的な税制改正の流れ(実体を求める流れ)からしますと非常に難しいかと思いますので、やはり実際に現地に移住される方や、現地にてオフィスを構えスタッフを採用して実際にそこでビジネスを行う予定がある方や企業様がこれらの制度を利用するメリットがあるとお考えいただいた方がよいです。